2019月07年19日
今回は2017年6月25日に行われたサロマ湖100kmウルトラマラソンを乗り越えた回顧録をお伝えしたいと思います。
私がサロマ湖100kmウルトラマラソンに挑戦した理由
先日もブログに書かせていただきましたが改めて、今回チャレンジした理由をご紹介させていただきます。
競技を2014年に引退しましたが、
「生涯ランナー」でいたいと思い、レースも走り続けていた私ですが、
最近、緊張感がないと感じていました。
そんな時、今年の東京マラソンであることに気づきます。
数名の仲間が、限界に近い目標を掲げて挑戦し、それぞれ達成していました。
仕事をしながら、自分のベストを更新しようと必死でした。
その姿を見て、私もまだチャレンジできることがあるんじゃないか。
そう思ったのです。
引退しても走力があるうちに「もう一度世界で戦いたい」と思い、
ウルトラマラソンにチャレンジしてみようと考えが浮かんだのです。
そこに至るまで不安もありました。その辺は前回のブログにも書いてありますので、ご覧ください。
ブログ:《サロマ湖100kmウルトラマラソンに初挑戦・優勝して見えてきたこと》
今回の目標は、1km4分30秒で走り、
7時間30分くらいでゴールできれば良いと思っていました。
ウルトラマラソンチャレンジ前日
私が湧別町に入ったのは、レースの行われる2日前の金曜日です。
前日の土曜日はゆっくりと過ごしましたが、楽しみ5割、不安5割の心境でした。
私が宿泊したペンションには、ウルトラマラソンの
常連さんたちが来ていた、いろいろな情報交換がされていました。
みなさん、各地でウルトラに挑戦し、
1年に一度ここで会うのを楽しみにされているような感じです。
ランナーの方で私がいることに気づき「加納さんも出るんですか?」と驚き、応援してくださった方もいました。
前日は夕方17時には夕食を食べて
20時には就寝したのですが、なかなか明日のレースのことが気になって寝付けません。
起床は朝の1時でしたので、結局2時間ほどしか寝付けなかったのです。
当日の気候
私が東京を出る時点では
当日の天気はくもりでした。
しかし、朝起きると、本降りの雨が降っています。
朝1時の気温は15度くらいです。
私たちは、スタート頃には雨は止んでくれるだろうと
楽観的に考えていました。
食事を朝2時に終えて、バスでスタート地点に向かって4時頃。
5時のスタートに向けて備えているのですが、
雨は一向に止む気配がありません。
ランナーの「やだなー」という声が聞こえて来ます。
私も現役時代から振り返っても
これほどまでに本降りになった大会は初めてです。
ましてや、雨の中で約7時以上走るわけですから、
なかなかの精神力が入りそうです。
雨だけでなく風が吹いてくれば、
さらに体温が奪われてしまうかもしれません。
しかし、悩んでいてもしょうがないので、最後は開き直って
「この中で、走るんだ」と覚悟を決めて走りました。
この天候で走りきったら、どんな悪天候でも
走りきれるという自信がつくと思うようにしたのです。
現役時代のように、結果に対するプレッシャーも無いので
気持ちを切り替えてスタート地点に立つことができました。
直前の防寒が功を奏した
東京を出る前の予報はくもりでしたから、ブレーカーは用意しない予定でした。
100kmですから、軽装が良いと考えての判断です。
ただ、東京を出発する前日になって、
何が起こるわからないと考え、ブレーカーを急遽用意しました。
そしてレース当日、このザーザー降りの雨を見た時に、
この判断はとても大きかったと確信しました。
もし、ブレーカーなしで走ったら体温を奪われて最後まで
足が動かなかったかもしれません。
何が起こるかわかりません。基本的な話ですが準備万端にするのは本当に大事です。
レース開始から前半50kmまで
やはり、ウルトラマラソンと聞くと、やっぱり体への負荷が気になるところです。
半分も行っていないのに、呼吸が上がってきて、不安に駆られたり
足の古傷に違和感を感じたりしました。
「まだ、50kmも行っていない。」
「痛みが、これ以上強くなったら、やばい。」
「他の痛みがやってきたら、耐えないといけないのか。」
前半は走り切れるのだろうかという不安が訪れます。
25kmで「体がしんどい」という感覚がやってきました。
少し、頭がふわっとしたのです。
「血糖値が下がったのか?」
「朝早いレースなので、体が起きていないのか?」
これはまずいと思い、エネルギーゼリーを食べました。
すると、食べたらすぐに体の調子が戻って来ました。
咄嗟の判断が功を奏して、ホッとしました。
大変だったお手洗いの問題
通常、私はフルマラソンでお手洗いに行くことはありません。
今回のレースは、気温10度、雨がザーザー降り、風も出ています。
体が完全に冷え切ってしまい、
スタートして7、8キロでお手洗いに行きたくなってしまいました。
お手洗いにいくのか、我慢して走るのか、
戦略上にとても大切なポイントでした。
しかし、レースの後半にお手洗いのために立ち止まってしまうと
足が動かなくなると判断し、早いうちから行くことを心がけました。
結局、寒くてお手洗いが近くなってしまい、5回も行きました。
そのためトータルで3、4分タイムをロスしていると思います。
レース終了後に他のランナーの方に、
トイレ事情についても聞いてみたところ、大体2回くらいだそうです。
もちろんタイムによっても変わると思いますが、
トップで走っているランナーで5回は珍しいそうです。
それほど体温が低下する状況だったと言えます。
また、後ろランナーの方は、お手洗いが混雑して、体が冷えて、
足が動かなくなってしまうという方もおられたようです。
この点もマラソンとは違い、結果に関わる大きなポイントだと感じました。
50km過ぎから
50kmくらいになると、
ランナーが他にいなくなります。
先日、美瑛のレースでコースを間違えたことがあり、
コースを間違えいないか、不安になっていきました。
60kmを過ぎてからは、雨と向かい風で身体が冷えてしまい、
足がきつくなってきます。
太ももに違和感を感じ出します。
63.5km でスペシャルドリンクを置いてあり、
メダリストの粉末アミノダイレクトを結びつけておきました。
補給後、3,4kmすると回復してきたため、
ペースを戻すことができ、前半と同じくらいのペースで80km辺りまで走っていけました。
余談ですが、フルマラソンをやっている時には、
アミノ酸やクエン酸補助食品に頼らなくてもレースは問題ありませんでした。
そのため、効果を実感することがなかったのです。
ただ今回、ウルトラをやって効果テキメンで、体が回復していくことを実感しました。
さて、この辺から、
男性ランナーでペースが落ちて来て、抜いていきます。
私も足がどんどんきつくなって、重くなっていきます。
時計を見ながらラップタイムが遅れていても焦らないように
「大丈夫、大丈夫。」
「今日はジョギングでペースでいいんだよ」と自分に言い聞かせます。
無理しなくていいと思い込むことで、
楽に走ることができ、焦る気持ちを落ち着かせるようにしていました。
80km過ぎから
雨は依然、降り続けています。
80kmに最後のスペシャルドリンクをとりました。
メダリストのアミノダイレクトを飲みます。
80-90km時点でサロマ湖ワッカの地点を走りますが、
行きが向かい風で、遮るものがありません。
向かい風と雨との戦いでした。
この状態で、10km走るのかと思うと気が遠くなります。
自分のペースが落ちて来ていることに気づきましたが、
極端に落ちて来ているわけではありません。
雨が降っているのに、なぜか水分を取りたくなります。
飲んでも飲んでも、水分が足りない感じでした。
90km地点で、折り返して戻ってくる先頭の男性ランナーも、
私のことを見て、声をかけて応援してくれました。
フルマラソンの先頭を走っている人が、後方のランナーを応援することはまずありません。
もう90kmも走っているとみんな同士の感覚になるのだと思いましたね。
すれ違う人も少ない先頭の方でしたが、
みんなで声をかけながら、走って来てくれたのです。
私も応援してもらったので、自分が90km地点で折り返す際は、
後方のランナーの方に「ファイト!」と声がけをして、ラストに向かっていきました。
体は苦しいのですが、声は出るものです。
90kmからラスト
雨風にやられて、体がどんどん硬直してくる感じになります。
呼吸が苦しいという感じはありませんでした。
さきほど、80km-90km時点が向かい風でしたから、
折り返したら追い風になると思っていました。
しかし、折り返したからといっても、ペースが上がって来たわけではありません。
なかなかペースが変わらず、苦痛になってくるものの
がむしゃらには走りながら95km地点までやってきました。
この時点で1位を走っています。
しかし、95kmを過ぎてから、突然
「もう5km、もう無理かも」と思ってしまったのです。
ここまで、ペースが1km4分40秒くらいで走って来たのですが、
95kmー97kmは、タイムが1km5分くらいになってしまいました。
「一瞬、抜かれるかもしれない。」と頭によぎります。
「初めてのウルトラだから、洗礼を受けるかもしれない。」
「最後に抜かれたら、間抜けだ。でもしょうがない。」
気持ちが段々と弱ってきましてきました。
最後は気力との戦いになってきます。
ラスト3km。そこに下り坂があり、リズムが戻った気がしたのです。
疲れ果ててたのが、元気になってきたと思ったら、2kmちょっとになりました。
ここまで、頑張らないといけないと思い、ラストペースをあげていきました。
1km4分40秒ペースに戻して、最後の力を発揮しました。
ゴールした瞬間
7時間37分21秒で1位でゴール。
1km4分半をキープしながら走りきれました。
100kmを終えたら、すごい疲労感に襲われると思っていました。
例えば、何もできないほど、疲れてしまうと思っていましたが、
実際は「帰ってきちゃったな」と意外に冷静でした(笑)
走りながら、いろいろと後悔しました。
100kmやるなんて、言わなければよかったと走りながら考えていました。
「優勝を狙っていきます」と言ってしまった手前、有言実行で結果をつくれたのは良かったです。
何よりも自分よりも周りが喜んでくれることで、初めて「優勝した」という実感を得ることができました。
挑戦することの意義や大切さを再認識するレースでした
今回、自分の知らない世界にチャレンジしました。
できるか、できないことへの挑戦です。
完走だけなら出来ると思っていましたが、優勝すると決めて自らハードルを上げました。
フルマラソンであれば、私は経験上、走力や力の関係で、だいたい勝負が読めます。
しかし、100kmは分からない。まったく読めない。
だから、本当に結果がどうなるかわからないことに挑戦したのです。
未知に挑戦する感覚は、2007年初めてフルマラソンをやった時の感覚と同じです。
「なんか、ここ来ちゃった」という感覚です。
その時と同じ感覚。
「どうなるかわからない自分に挑戦している」感覚です。
そして、挑戦した結果、自分がこのステージで次に挑戦することも見えてきました。
今回、ウルトラのためのトレーニングをしていたわけではありません。
だから、狙いを定めてトレーニングすれば、次はさらにもっと良くなるだろうと感じました。
来年のサロマ湖100kmウルトラマラソン2018は日本代表の選考レースになります。
ここでの優勝を目指していきます。
今回の挑戦でウルトラは体の体調や天候次第で
10分、20分のズレがでてきてしまうことも分かりました。
やるなら、もっと頑張っていきたい。
もう少し突き詰めていけば、さらなる満足度や達成感がでるはずです。
1回目で優勝できたのは、ラッキーでした。だからこそ、2回目こそが、肝心だと思うのです。
2007年、私がフルマラソンにチャレンジした時は気持ち的に楽に走れました。
何もないからこそ、プレッシャーもなく、楽しく走れたのです。
今回のサロマ湖も1回目ということで、レース中の葛藤はありましたが、
あの時のように、意外にプレッシャーなく走れたのかもしれません。
「次の大会で自分がどれくらいできるのか」が大切です。
しかし、私がマラソンをやっていた時のように、
前回を超えなくてはいけないという自分に対するプレッシャーや、
周りの期待で押しつぶされるようなことは無いようにしたいです。
結果を出さなくてはいけないという義務感は苦しくなるからです。
だから、今は自分の中は「楽しく走る」を心がけて走るようにしています。
次に向けての挑戦が始まりました。是非また応援してくださいね。
お読みいただきありがとうございました。