2020月01年15日
こんにちは、加納 由理です。
先週9/9、福井市で開催された全日本インカレの100mで、桐生祥秀選手が日本人史上初9秒台となる、9秒98を記録しましたね。
1998年のバンコクアジア大会で伊東浩司さんが記録した10秒00から、19年の歳月を経ての記録。
私自身とても嬉しく思いました。
その歴史的なレースで、偶然にも私の知り合いが関わっていました。
レースのスターターを務めた福岡渉さんです。
福岡さんは、私が今年の3月に福井のジュニアアスリート陸上教室に講師で行かせていただいた時に、2日間アテンドをして下さった方です。
今回の桐生選手の報道の後、スターターとして NHKにも取材をされていました。
早速、連絡をとりあっていましたので、今回、歴史的快挙について伺ってみました。
裏方の方たちの話をしっかり聞くことが出来たのは初めてでしたので、ものすごく新鮮でした。
福岡さんの紹介
普段は高校の事務職員をされており、福井県のスターターチームの主任を務め、 福井市のジュニアアスリートクラブの指導も行っています。
メディアでの反響
加納:改めまして、おめでとうございます!
NHKでの福岡さんの映像、観させていただきましたよ。 ご自身がスターターと務めるレースで日本人初めての9秒台が出るなんて嬉しいですよね。
NHKの映像では、福岡さんがうまく風を読んだという風に報道されていました。
今回のレースで、色々と周りの反響があったのではないでしょうか?
福岡:ありがとうございます。歴史的な瞬間に立ち会えて、本当に興奮しました。
メディアでは、自分が風の向きを読んで、スタートのタイミングを狙っていたと報道されました。
でもたまたま、あの時間に良い風が吹いただけで、これは桐生選手の頑張りですよ(笑)
桐生選手の力になれてよかったです。
記録の出た会場は、実は風が吹きやすい競技場だった
加納:今年の3月、今回と同じ競技場で陸上教室をさせていただきました。
あの競技場は夕方になると、強い風が吹いていました。風が吹く競技場は、選手にとって走りにくいと思うんですよね。
その点で、何度もこの競技場でスターターを務めてきた、福岡さんも今回、意識されていた点はあったのですか?
3月に福井でジュニアアスリート陸上教室の様子。この時も、夕方から風が強く吹いてきました
福岡:その通りです。
福井の競技場は、周りに建物が無くスタンドも小さくて風をさえぎるものがないんです。
風の吹く方向もあっちこっち色々変わるから、風を読むのは難しいんです。
報道では、僕が風の止まるタイミングを待っていたように伝わってましたよね。
ただ実際は、競技の進行時間も決まっているから、スタートの始まる音楽やファンファーレがなったら追い風でも向かい風でも、選手をスタートにつかせなくてはならない、常に、どのレースも公正、公平にジャッジしなければならないのです。
僕達審判は、選手がスタートについた時点で、いい条件で走らせてあげたいと願うしかできないんです。
加納:私は長距離だったので、スタートのタイミングは、ほぼ気にしていませんでした。
短距離の選手は、スタートのタイミングを合わせるために、日々スタートトレーニングをしていますからね。
風は運、スタートのタイミングは日々の努力といったところでしょうかね。
サポートする側もとても緊張したレース
8月のロンドン世界選手権のリレーのメンバーの2人が走るということで、それを見に駆けつけるファンも多いんじゃないかなと思っていました。
私も、レースの日に仕事がなかったら見に行きたかったですから。
今回のレースに関わってみて、特別感はありましたか?
福岡:今回のレースはすごく緊張しました。
普段、陸上教室を教えている、小さい子達からも声が震えていたと指摘されたし、緊張しすぎて、食事も喉を通らなかったです。
加納:やはり、そうなりますよね。テレビを見ていても、空気は伝わってきました。
大会審判も、オリンピックに向けて日々努力
加納:今回の記録でさらに陸上が盛り上がってくれると嬉しいです。オリンピックも控えていますし、福岡さんも次の目標はありますか?
福岡:来年は福井国体も控えていて、今は福井の競技役員チームで選手に気持ちよく走ってもらいたいと、頑張っているところです。
注目選手だけでなく、全ての選手に力を発揮できるようなに環境を整えていきたいと思っています。
加納:なるほど、3月にお会いした時、2020年東京オリンピック・パラリンピックのスターター研修を東京へ受けに来られているという話をされていましたね。
一般の方達は、そういう研修があることも知らないと思います。
福岡:オリンピックに向けたスターター研修は、各県で推薦された人が受けることになっていて、福井県からは僕が受けに行っていますよ。
オリンピックでスターターとしての舞台に立つためにも、事前課題、試験があり、英語も習得が必要なんです。
競技役員も、スターター・審判・写真判定など、色々役割があります。僕達も大会に関わるために、幾つか試験があるんですよ。
加納:そうなんですね。大会を裏で支える役員の方たちも、試験や練習があるんですね。それは、初耳でした。
大会運営をサポートしてくださる側にも、選手と同様に並々ならぬ準備がありオリンピックの舞台に立てるのですね。
スターターも、やはり色々な技術がありますよね。どんな練習をしているんですか?
福岡:はい、最初の頃はピストルを打つタイミングですね。速かったり、遅かったりで、色々注意を受けていたし、悔しい思いをしたこともありました。
選手を気持ちよくスタートさせてあげたいから、先輩のアドバイスは素直に受け止めて、練習は重ねましたよ。
スタートの最初の合図、オンユアマークスのオンを強調して、背中を押してあげるような気持ちで合図すると、選手も「よし、いこう。」という気持ちになりますからね。
その他にも声や、立ち方、振る舞い等に気をつけていますよ。
加納:競技役員の方たちもそうやって、お互いに声を掛け合っているんですね。選手が、切磋琢磨して強くなっていくのと同じですね。
私、現役時代はまったく知りませんでした。知っていたら、もっと感謝が湧いたと思います。今更ですが、皆さん、本当にありがとうございます。
それと、福岡さんもオリンピックの舞台に立てるといいですね。応援しています。
まとめ
日本人史上初9秒台となった桐生選手の歴史的快挙の裏で、スターターという仕事にメディアの注目が集まりました。
しかも偶然にも、今回のスターターが福岡さんだったので、今回大会の裏側のお話を伺いました。
競技を支えて下さる方にスポットが当たることは素晴らしいいことだと思います。
8月に開催されたロンドン世界陸上選手権の話ですが、現地に行っていた私の知り合いが、大会のボランティアスタッフが素晴らしかったと言っていました。
スタッフは連日、朝から晩まですごく大変だけど、明るくてとにかく雰囲気が良いという話でした。
福岡さんのNHKの映像でも、役員の方たちも一緒に喜んでいる姿が映っていました。
オリンピックに向けた選手のストーリーや活躍は、連日メディアを通して届きます。
一方で、福岡さんのようにサポートする側の皆さんも、オリンピックを目指しているというお話もすごく印象的な話でした。
それぞれの想いが詰まった2020年の東京オリンピック。
私もますます楽しみになってきました。東京オリンピックまで、あと3年、最高の大会になることを願っています。